特許法とは、「技術的ブレイクスルーをどう独占し収益化するか」という問いの答えであり、本質的に「国への技術公開(代償)と引き換えに独占権(報酬)を得る契約」を理解するために学ぶ必要がある。
これは手続きの丸暗記ではなく、「発明の定義という入り口と、登録までのフィルター構造」の理解がすべてである。
これにより「事例問題での特許要件の判定」が可能になる。
このテーマを習得する最短ルートは、まず「出願から登録までのタイムライン」を図式化することだ。
知識を「拒絶理由(新規性・進歩性欠如)の潰し込み」に直結させ、「職務発明などの応用論点」へと逆算して繋げる。
👨🏫 森谷Tの中小企業診断士試験対策用板書
🚪 特許法の入り口:「発明」とは何か?
「特許法」は経営法務の中でもボリュームが多く、挫折しやすい分野です。しかし、恐れることはありません。まずは「何が特許になるのか?」という入り口をしっかり固めましょう。
特許法で保護される「発明」には、厳密な定義があります。ここが試験の頻出ポイントです。
📌 発明の4要件(ここがズレると特許になれない!)
特許法上の発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されています。
- 自然法則を利用していること:
- 万有引力や化学反応などはOK。
- NG例: 経済法則、ゲームのルール、計算方法、人為的な取り決め(単なる勉強方法など)。
- 技術的思想であること:
- 誰がやっても同じ結果が出る「再現性」が必要です。
- NG例: 技能(熟練パティシエの勘と経験によるケーキ作り、プロ野球投手の変化球の投げ方)。これらはマニュアル化(技術化)できないため対象外です。
- NG例: 単なる情報の提示(デジカメの画像データそのもの)、美的創作物(絵画など→著作権へ)。
- 創作であること:
- 新しく作り出したもの。
- NG例: 単なる発見(天然の鉱石を見つけた、自然現象を発見した)。
- 高度であること:
- 実用新案(小発明)と区別するため、「高度」という言葉が入ります。
🚧 特許になるための「5つの壁(要件)」
発明の定義をクリアしても、すぐに特許がもらえるわけではありません。以下の5つの壁を乗り越える必要があります。
- 産業上の利用可能性: 工業的に量産できるか。個人的な趣味(喫煙方法)や、現実不可能なものはNG。
- 新規性: 新しいこと。すでに知られている(公知)、使われている(公用)、刊行物に載っている技術はNG。
- 例外規定: 学会発表などで自ら公開してしまっても、1年以内に出願+証明書提出等の手続きをすれば、新規性を失わなかったものとみなせます(救済措置)。
- 進歩性: 容易に思いつかないこと。
- NG例: 既存の技術の単なる寄せ集め(多機能ナイフ)や、素材の置き換え(キャスター付きの机)などは、誰でも思いつくので特許になりません。
- 先願主義: 早い者勝ち。
- 同じ発明なら、1日でも早く出願した人が勝ちます。
- 同日の場合: 協議で1人を決めます。決まらなければ誰も取れません(喧嘩両成敗)。
- 公序良俗違反でないこと: 反社会的な発明はNG。
⏳ 出願から登録までの「タイムライン」を制する
ここが最重要かつ複雑なパートです。特許は「出願」だけでは権利になりません。「審査請求」というアクションが必要です。
- 出願: 特許庁長官へ書類提出。
- 出願公開: 出願から1年6ヶ月後に、内容は強制的に世の中に公開されます。
- 補償金請求権: 公開後、勝手に真似した人には「警告」をすれば、後でお金を請求できます。
- 審査請求: ここがポイント! 出願から3年以内に「審査してください」と言わないと、出願は取り下げ扱いになります。
- 誰でも請求可能です(ライバル企業が「早く白黒つけろ」と請求することも可)。
- 実体審査: 審査官が中身をチェック。
- 拒絶理由通知: 「これダメだよ」と言われたら、意見書や補正書で反論します。
- 特許査定・設定登録: OKが出たら特許料を納付して、晴れて特許権発生!
- 存続期間: 出願日から20年で終了です。
🤝 ライセンスと職務発明(実務で使える知識)
1. ライセンス(実施権)
特許権者は、他人に特許を使わせる(ライセンスする)ことができます。
- 専用実施権: 最強のライセンス。登録が必要。設定した範囲内では、特許権者本人すら使えなくなります。独占力が強いので、差止請求や損害賠償請求も可能です。
- 通常実施権: 普通のライセンス。登録不要。差止などはできません。
2. 職務発明(サラリーマンの発明)
会社の業務で従業員が発明した場合のルールです。
- 権利の帰属: 原則、発明した従業員に「特許を受ける権利」が発生します。
- 会社には、無償の通常実施権(タダで使っていい権利)が与えられます。
- 予約承継: 契約で「権利を会社に譲る」と決めておくことができます。その代わり、従業員には「相当の利益(金銭など)」を受ける権利が発生します。
3. 先使用権
他社が出願した時点で、たまたま自社も独自に開発して既に事業をしていた場合、継続してその事業を行える(無償の通常実施権)という救済ルールです。
💡 まとめ:特許は「交換条件」である
特許法の核となる理屈は、「公開の代償としての独占」です。 国は技術を公開させて産業を発展させたい。企業は独占して儲けたい。この利害調整が、厳格な要件や期間制限(20年)に現れています。 「定義」→「要件」→「手続き」→「活用(ライセンス)」の流れを意識して復習しましょう!
💡 森谷Tの定着度チェック問題!(全3問)
【問題1:発明の定義】
特許法における「発明」の定義を覚えていますか?「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」でしたね。では、以下の中で特許法の「発明」に含まれるものはどれでしょうか?
- 絶対に儲かる株式投資の運用ルール
- プロ野球選手が編み出した、消える魔球の投げ方
- 自然界に存在する新種の微生物を発見したこと
- 微生物を利用して汚水を浄化する新しいシステム
【解答1】
4. 微生物を利用して汚水を浄化する新しいシステム (補足:1は自然法則不算入、2は技能、3は単なる発見です。4は自然法則を利用した技術的思想です)
【問題2:特許出願の手続き】
特許出願をしただけでは、審査は開始されません。出願日から3年以内に、あるアクションを起こす必要があります。誰でも行うことができ、これを行わないと出願が取り下げられたとみなされる手続きは何ですか?
【解答2】
出願審査請求(審査請求) (補足:特許庁は忙しいので「本当に権利化したいもの」だけを審査する仕組みです)
【問題3:職務発明の権利】
会社の業務として従業員が発明をした「職務発明」。あらかじめ社内規定などで「特許を受ける権利を会社に承継させる」と定めていた場合、会社は権利を取得できます。では、その代わりに従業員が得ることができる権利は何ですか?
【解答3】
相当の利益(金銭その他の経済上の利益)を受ける権利 (補足:以前は「対価」でしたが、現在は金銭以外の昇進や留学なども含む「相当の利益」となりました)


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